
オゾン層保護のための観察
オゾン層は、地上約15kmから40kmの大気中にオゾン(O3)が集まって層を作っているもので、皮膚ガンや白内障、免疫力の低下などの原因となる有害な紫外線から私達を守っています。この大切なオゾン層が、フロンガスによって破壊されることがわかり、1970年代の後半から問題視されるようになりました。
我が国では、国内的な措置を実施するための「オゾン層保護法」が1988年に制定され、その中で、オゾン層の状況とオゾン層の破壊に関係する物質の大気中濃度の観測ならびに監視を行うことを定めています。
これらを背景として、環境省では衛星搭載センサILAS-II を打上げました。またそれを受けて、独立行政法人 国立環境研究所ではILAS-II
のデータ処理システムの開発、実際のデータ処理運用、処理されたデータの検証解析を担当しています。さらに国内外の研究者の参加によるサイエンスチームの組織化を行い、ILAS-II
データを利用した大気科学に関する研究を進めています。
ILAS-II(改良型大気周縁赤外分光計II型)プロジェクト
改良型大気周縁赤外分光計II型 (ILAS-II:Improved Limb Atmospheric
Spectrometer-II)は、 地球規模の環境監視を推進する観点から、環境省が開発したセンサであり、 2002年12月14日に種子島宇宙センターから打上げられたNASDAの環境観測技術衛星「みどりII」(ADEOS-II:Advanced
Earth Observing Satellite-II)に搭載されました。 ILAS-II は、南北両半球の高緯度地域の上空(成層圏)における大気微量成分やエアロゾル、気温、気圧などの高度分布を高精度に測定することができ、オゾン層の監視と研究のために重要な役割を果たすものと期待されています。
ILAS-II 観測原理
ILAS-II の観測は、「太陽掩蔽(えんぺい)法」という原理に基づいています。太陽掩蔽法は、ADEOS-II
の軌道上で日の出および日の入り時の1周回に2回、 地球周縁の大気を通してILAS-II センサに到達する太陽光の透過率を波長毎に測定する方法です。大気中に存在する微量成分は、
それぞれ特有の波長で光を吸収するので、波長毎の吸収の大きさを測定することにより大気微量成分の濃度を算出することができます。 さらに、ILAS-II
は衛星の日の出、日の入り時に太陽を追尾しながら観測を行うので、異なる高度の地球周縁大気の透過率が得られ、 その情報を基にしたデータ解析により大気微量成分の高度分布が算出されます。
PV-WAVEについて
国立環境研究所では平成2年からPV-WAVEを導入しています。
「操作方法を覚えるために講習会の受講や日本語マニュアルなどが大変役に立ちました。PV-WAVEデモギャラリー(サンプル アプリケーションのセット)では、ソースコードが用意されているので、自分のアプリケーションにこれらを取り込めるので便利でした。特に地図投影のデモは役に立ちました。」とスタッフの方から好評をいただいています。
PV-WAVEによるILAS-II データの処理
それでは、実際にPV-WAVEを使ったグラフをご紹介いたします。
図1は、南極上空における極渦の状態を示す”渦位”といわれる図に ILAS- II の観測点を重ねて表示したもので、オゾンホールの二次元分布構造を表したものです。
図2はILAS-II よって観測された「高度-経度」断面から見たオゾン濃度分布を表しています。南半球で取得した1日分のデータを、ほぼ同一の緯度線上の異なる経度地点で測定されたものを組み合わせて、経度方向に内挿することで描かれた高度-経度の断面内の分布図です。オゾンのほかにも、硝酸、二酸化窒素、亜酸化窒素、メタン、水蒸気、エアロゾル消散係数[780nm]の量が同様な画像で表示されています。図の上部の(*)は、ILAS-II
測定の行われた地点の経度を表しています。
図3はILAS-II によって得られたデータの精度を検証するため、南極のドイツ・ノイマイヤー基地の上空でオゾンゾンデにより測定された結果と比較したものです。2つの線がおおむね一致していることから、ILAS-II
のデータがかなり正確であることがわかります。
※その他、https://www-ilas.nies.go.jp/data2/GENERAL/sample-j2.html でもILASデータのサンプル図をご覧いただけます。
オゾンホール成長の予測
こうして2003年、国立環境研究所は、南極上空のオゾンホールの発達を左右するといわれる窒素酸化物や硝酸など数種類の微量ガスの連続測定に世界で初めて成功しました。その結果、オゾンホールが成長を始める8月に、オゾン層の破壊を抑える窒素酸化物のガス濃度が大幅に減少し、2003年10月・11月のオゾンホールが大規模になることが予想されました。
今後も国立環境研究所ILAS-II プロジェクトでは、より正確な予測が出来るよう、高層大気環境の観測・過去のデータの正確な検証を追求していく予定です。
(データ・情報提供:独立行政法人 国立環境研究所 ILAS-II プロジェクト)
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