課題
アメリカ海軍が熱帯低気圧の観測を始めたのは、今から60年以上も前のことです。第2次大戦中の1944年12月、海軍は西太平洋で台風に遭遇し、多くの人命と3隻の戦艦、それに多数の航空機を失いました。この惨劇以来、海軍では熱帯低気圧の発見と位置観測を行う専用の航空機を使用し、熱帯低気圧の位置と強さを非情な努力を払って監視しています。
天候の監視に初めて衛星が使用されたのは、1960年代半ばになってからでした。そして1970年代初め、それらの衛星は熱帯低気圧の監視のために使用されるようになりました。1987年、国防省はSSM/I(特殊センサー・マイクロ波画像装置)の使用を開始しました。これは、マイクロ波周波数を使用するセンサーで、雨雲以外の雲の上層を見通すことができます。これにより、標準的な可視および赤外領域(IR)の生成画像ではわからなかった低気圧の構造が見えるようになりました。
SSM/Iで記録したデータの解析をNRLが最初に始めたときには、内部の処理・可視化ソフトウェアパッケージが使用されました。このパッケージは多目的の関数群であり、アナリストが広範な衛星によって収集された画像を処理・チェックすることを念頭に置いたものです。このソフトは、複数のセンサーを扱う際の必要条件をすべて満たすために、膨大な入力データを必要としました。しかし、通常はたかだか1つ2つのセンサーしか使用しないユーザーにとって、適切な入力データを与えるための時間と労力が負担となっていました。
内部のソフトは、このようにパワフルな反面、多量のSSM/I画像を検査、処理、解析するには時間がかかりすぎました。このソフトを使えば1枚の画像を緻密に吟味することができましたが、ある熱帯低気圧の複数の画像を扱うには向いていませんでした。そのうえ、ユーザーインタフェースが煩雑で時間のかかるものでした。
NRLの研究作業に必要なソフトウェアの条件としては、複数の熱帯低気圧に関する数千ものSSM/I画像に容易にアクセスできること、同一の低気圧の画像が簡単に表示できること、SSM/I画像とその生成データ(たとえば風速や降雨量など)が生成できること、数百もの画像がバックグラウンドで高速に再処理できること、低気圧の中心の再決定ができること、解析される各画像にコメント部分が備わること、そして完成したデータがその後も容易にアクセスできるように保存ないしアーカイブされること、などがあげられます。
ソリューション
NRLは、Research Systems社のIDL、XVTの開発システム、ビジュアルニューメリックスのPV-WAVEなど、いくつかのソフトウェアパッケージについて評価を行いました。そこで、PV-WAVEが選ばれたのは、作業がしやすく関連維持費が他より安かった点、および作業システムの開発が最も短期間にできる点、そしてなによりも可視化機能が最も優れていた点によります。NRLの既存の科学アプリケーション「TROPX(熱帯低気圧処理システム)」をPV-WAVEと併用することで、強力な可視化および解析ツールが作成されました。
PV-WAVEを使用することで、NRLでは1987年以降に処理した2000枚の熱帯低気圧の画像をデータベース化することができました。SSM/Iの7チャネル全部または一部を使用して収集したデータがユーザーに利用可能となり、海面での風速や降雨量などの重要パラメーターが導出できるようになっています。
このようなデータセットは、熱帯低気圧の構造や強さを理解するうえで欠かせません。強さの変化は、構造が時間的に変動することの直接の結果です。主任科学者とリードプログラマーはPV-WAVEのウィジェットとPV-WAVEを用いて試作品を素早く作成し、それを組織内で共有しています。GUI(グラフィカルユーザーインタフェース)を効率的に設計する方法について多くの「what
if シナリオ」が議論され、同じことをX Windowのコールで行えば数時間から数日かかるものが、PV-WAVEウィジェットは変更を数分で行ってしまいました。
投資対効果(ROI)
NRLの気象学者Jeff Hawkins氏は、次のように語っています。「私たちの目標は、SSM/Iセンサーが捕らえた画像から熱帯低気圧の強さを抽出する方法を見つけだすことでした。これまで、熱帯低気圧のSSM/I画像の時系列を正確に可視化することは困難でした。しかし、PV-WAVEを使うと衛星が捕らえた多量のデータが効率よく処理、表示でき、さらに降雨帯の構造や風速、降雨量などといった低気圧の重要な特性がこれまでより簡単に可視化、分類できます。PV-WAVEのルーチンによってアプリケーション開発にかかる時間が何百時間も節約できています。これからも新しい低気圧のデータを収集、保存するごとに、それを正確に追跡、分類する技術が改善されていくことでしょう。それによって、全世界に散らばるアメリカ海軍の船舶、航空機、それに人員と資産の安全を確保するという我々の最終目標に一歩一歩近づいていきます」