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使用事例 -- ライフサイエンス: 社団法人 バイオ産業情報化コンソーシアム  

病気の治療・創薬へ繋がるタンパク質研究 〜IMSL Fortranの使用事例〜



生命科学の時代の到来
約十数年前から種々な生物のゲノムの塩基配列を網羅的に決定しようとゲノム研究が世界規模で精力的に行われてきましたが、2003年4月にヒトゲノムの塩基配列の解読完了宣言が出されました。次のステップとして、酵素やホルモンなど蛋白質の立体構造を解明する「構造ゲノム」の動きが本格化しています。遺伝子情報に従って体内で作られる蛋白質を解明し、病気の原因究明や新薬の開発につなげることがねらいです。約10万種類あるといわれる蛋白質のうち約一万種類が治療薬や診断薬の開発に直接結びつくと考えられており、既に2000〜3000種類の構造解析が終わっています。まさにヒトゲノムの配列データを基にポスト・ゲノムシーケンスと呼ばれる、遺伝子や蛋白質などの機能の研究を中心とした、バイオテクノロジーがより産業に近づく時代の到来となりました。

社団法人 バイオ産業情報化コンソーシアムについて
21世紀の時代に対応し、基盤的な研究から産業化への橋渡しをするため、様々なバイオ産業の民間企業を中心とし、大学・公的研究機関等の参加を得て、社団法人バイオ産業情報化コンソーシアム(JBiC)が2000年に誕生しました。JBiCと産業技術総合研究所の共同体である生物情報解析研究センター(JBIRC)は、大量のゲノム情報をベースとする生物情報の取得・整理及び統合を、生命科学の立場より推進する事を目標としています。特に、わが国が世界に対して優位性を持つ膜蛋白質の立体構造解析、ヒト完全長cDNAの機能解析、バイオインフォマティクスを中心に研究を行っています。

構造情報解析チーム(チームリーダー;大阪大学蛋白質研究所、中村春木教授)では、新薬開発のためのDrug Designや、コンピュータまわりのソフトウェア開発などの研究をしています。Computer Assisted Drug Design(CADD)とは、計算機を駆使して、病態に関連する蛋白をうまく阻害あるいは活性化する分子構造を合理的に設計することです。これにより、高い効能を持つ医薬の開発が期待されます。

「これまで、分子の静的安定構造の定量解析は、多くの研究者で行われていましたが、動的過程(ダイナミクス)の定量解析は、あまり行われていませんでした。この方法により、新しいタイプの薬の開発ができます。」と産業技術総合研究所 研究員・工学博士 福西快文氏は強調します。
IMSL については、主成分解析とクラスター分析のプログラムを活用しています。
「以前は、自分でプログラムを書いていたのですが、IMSL を使い始めて、かなり作業時間が節約できたメリットは大きいです。」
それでは、実際のIMSL の使用例を紹介いたします。


蛋白質の動的過程(ダイナミクス)の定量解析の例
ゲノムを読み取っても塩基配列という暗号文字の羅列でしかありませんが、蛋白質は、ホルモンや酵素などとして働くものなので、立体構造を解明し機能を調べることが重要になります。 
蛋白質独自の機能を発揮するために、蛋白質の中でも特にループ領域が使われることがありますが、ループは柔軟性に富み動きやすいため、実験的な構造解析から原子の位置を決定するのは困難な場合があります。そこで、蛋白質のファンクションを発揮するのに重要なループ領域について、マルチカノニカル分子動力学計算(※1)を用いてモデリング計算を行いました。

7回膜貫通型G蛋白質共役受容体(GPCR)は、膜蛋白質のサブグループの中で最も大きなファミリーを形成しています(ヒトゲノム中では1,000個前後)。現在市販されている医薬品でも50%近くがGPCRに作用すると言われています。GPCRは、ほとんどの高等生物のあらゆる部位に存在し、生物にとって極めて重要な事が分かっていましたが、X線結晶構造解析のための結晶化が大変難しく、超微量しか存在しないため、長い間、原子レベルでの立体構造は不明でした。しかし、網膜の桿体細胞に局在している光受容体;ロドプシン(Rh)は、唯一入手が容易であったため、GPCRの代表モデルとして様々な研究が進められ、2000年には世界で初めてそのX線結晶構造(※2)が明らかにされました。

 
 
図1
 
 
図2

GPCRの中でただ一つ立体構造が判明しているRhは、受け取った光シグナルを伝達するために、トランスデューシンと呼ばれるG蛋白質と結合し、さらに下流の蛋白質にシグナルを伝達します。RhがG蛋白質トランスデューシンとの複合体形成に重要と考えられているのが細胞質側第3ループです。

ループモデリング計算の結果、ループは多様な立体配置をとっていたので、主成分分析(多変量データの持つ情報を少数個の総合特性値に要約する手法)を実施し、おおよその構造分布を確認しました(図1)。さらに、IMSLのWard's method(ウォード法:クラスター内平方和が最小となるように融合させる方法)を用い、K-meansクラスター分析を行いました。その結果、第3ループを代表的な3つの構造集合体に大別することが出来ました(図2)。 3つのループ構造集合体(a,b,c-clusterと呼ぶ)のうち、c-clusterは結晶構造に類似、b-clusterはRhのNMR断片構造を反映、a-clusterはどちらにも属さない構造が示されました(※3)。

(※1) N. Nakajima, A. Kidera, and H. Nakamura (1997). J. Phys. Chem. B 101, 817-824. (※2) K. Palczewski, T. Kumasaka, T. Hori, C.A. Behnke, H. Motoshima, B.A. Fox, I. Le Trong, D.C. Teller, T. Okada, R.E. Stenkamp, et al. (2000). Science 289, 739-745. (※3) Y.S. Watanabe, Y. Fukunishi, and H. Nakamura (2004) J.Mol.Graph.Model. 23, 59-68 

※本研究は、NEDO生体分高分子構造情報利用技術開発プロジェクトにより行われました。

今後の展開

現在、大量の蛋白質の立体構造解析が国内外で一大プロジェクトとして進められています。日本では2002年から「蛋白質3000プロジェクト」として立体構造を網羅的に解析する研究が始まりました。( http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/14/02/020213h.htm ) 研究で得られた構造情報は、データベースとして蓄積されるため、異なる蛋白質間での比較やさまざまな応用研究にも利用出来ます。これらの情報が、今後の病気の治療や創薬へと繋がっていくことが期待されています。





業種
生命科学

アプリケーション
主成分解析とクラスター分析

製品
IMSL Fortran




Key Benefits

> 開発時間の短縮
> クラスター分析と主成分解析
> 使用が容易
   
   
   
   
   
 
   
 
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